外壁塗装。一戸建てに住んでいれば避けては通れない工事です。危うく訪問業者に騙されそうになった我が家の実例をご紹介します。
はじめに
外壁塗装は新しい物を買うという訳ではありません。メンテナンス、補修工事です。
何か新しい物を買う時はワクワクしながら色々考えたりもできますが、基本的に補修なので屋根や壁の色を変えるぐらいしかできません。
はっきり言ってとても面倒くさいです。しかし、面倒だからと適当に塗装業者選びをすると泣きを見ることになります。かなり長い記事となりますが、私の実例をご紹介していきます。
ご参考になれば幸いです。
一般的に外壁塗装は10年周期
昔から「屋根壁10年」と言われる外壁塗装。我が家もその10年を迎え、いよいよ塗装の時期となりました。私の自宅は木造2階建て、壁はサイディングボード仕上げです。壁の材料自体はまだ問題なさそうですが、サイディングの継ぎ目(シーリング)の劣化が目立ってきました。
2年ほど前までは全く問題なかったのですが、ここ数年で一気に劣化が進行したようです。これを放置すると壁内に雨水が浸入し、内部を腐らせる原因となります。そろそろ塗装業者を探さないとな、と思っていました。
そして訪問業者はやってきた
偶然家の外にいた時に、訪問業者に声をかけられました。
【業者】「外壁の塗装をお考えではないですか?今、キャンペーンのご案内をしておりまして…」
かなり遠方から来ている業者でした。キャンペーンの内容は、
【業者】「私達はこの辺で外壁塗装の実績があまり無いのです。モニターになってくれる家を探しているので、今契約してくれたら足場代などをサービスさせてもらっています。」
というものです。
実は2年前にも別の訪問業者から同じような話しを聞きました。その時は自宅の壁に問題は無かったのでお断りしましたが、今回はタイミング的にバッチリです。
【私】「外壁塗装工事を考えています。見ての通りシーリングが傷み始めているので」
この時点では外壁塗装について何の知識もありませんでした。見積もりは無料と言うのでキャンペーンで安くなるならと見積もりをお願いすることに。
早速、訪問業者が家の外寸を測り始め20分程度で計測は終了(この時、午後2時頃)。
【業者】「見積もりの内容をご説明したいのでご都合はいかがでしょうか?」
【私】「見積もりって今日できるの?」
【業者】「本日の夜でよければ可能です。」
へー、そんなに早くできるんだ。ということで夜の7時に再訪問してもらう約束をしました。
見積もりが出る夜までにはまだ時間があります。何の知識もないまま商談に挑むのは無謀なので相場を調べておくことにしました。
日本の平均的な大きさの一戸建ての場合、屋根、壁の塗装をして平均相場は120~180万円だそうです。結構な値段ですね。価格に幅があるのは使う塗料によって値段が違うからです。
間を取ると150万、壁が100~120万、屋根は30~40万ぐらいと仮定しました。足場代の相場が25万ほど、依頼しているのは壁だけなので70~90万前後なら適正ということになります。
いよいよ商談の時間となりました。見積もりの説明に来た人は声をかけてくれた人とは違う人で工事部の施工管理者だそうです。
最初に家や壁の構造についての説明がありました。壁のメンテナンスを放置すると雨漏りして大変な事になりますよという内容です。
そして我が家の外壁面積、塗料の種類についての説明後いよいよ見積もりとご対面です。しかし…
なんと外壁や屋根に現在ではほとんど使われないと言われているウレタン塗料の見積もりでも170万、一般的なシリコン塗料で190万!この業者が一番長持ちするというオリジナル塗料(光触媒系塗料)ではなんと約300万!!(壁だけの見積もりですよ。)
これは無いなと不信感が一気に高まりました。私が難色を示すと業者は値下げの話に入ります。提示の見積もり金額から40%値引きすると言い出しました。足場代、自分たちの作業費もいらないと言うのです。理由はこのエリアで外壁塗装の実績が欲しいと。
それだけを聞けば分からなくもないですが、それにしても値下げ幅が大きすぎます。300万の40%って120万なんですけど…。と言うより提示の見積もり金額が高すぎる。これは高い金額を先に提示、大幅値下げで即決させる手法だと悟りました。
こりゃダメだと思いましたが業者はなかなか帰りません。私が即決しないので、業者は「この場で即決してくれたらさらに値引きも可能」と匂わせてきました。キャンペーンの枠もあと2件なので今しかない、と。
私は「ここで即決は無理です。しかし前向きに検討する」と言って一旦はお引き取り願いました。
業者は私の連絡先を聞くことももなく帰りました。やはり即決狙いなのでしょう。残念なのは説明にきてくれた方は悪い人ではなかったということです。説明は丁寧、話し方も完璧でした。価格が妥当でおかしな手法でなければここでお願いしていたかも知れません。願わくば別の仕事でこのスキルを生かしていただきたいものです。
良い塗装業者を選ぶために-1.自宅の現状を知る
真面目に塗装業者を探さなければならないので勉強を始めることにしました。最初は自宅の現状を知ることからです。ポイントは以下のようになります。
塗装の値段は「平米単価」となります。家の面積が大きいほど塗装代は高くなるということです。これを知らないと相場は掴めませんのでまずはここを把握することから始めます。最初に自宅を購入した時の資料、図面などを引っ張り出してきました。
「外壁面積 計算」で検索した結果、外壁面積の計算は以下の3通りの方法で計算できるとのこと。
1.家の外壁面積を実測
2.述べ床面積から計算
3.図面から計算
現実問題として自宅外壁の面積を実測できる人はあまりいないと思います。
簡単な方法としては2.の延べ床面積から計算する方法ですが、あまり正確ではないのであくまでも目安となります。我が家の場合この方法で計算した面積と実際の見積もり(塗装業者さん2社に図面を渡して見積もりしたもらった場合)と比較すると15%ほど小さく計算される傾向でした。これを考慮してまずは面積を計算してみましょう。
図面がある場合は家のの寸法からおおまかに計算することができます。正確に計算する場合は窓の面積を抜いたりする必要がありますが、欲しいのはあくまでも目安ですので抜かずに計算してみてください。家の4面分をを足した値が外壁面積となります。
延べ床面積から計算する方法が小さめとなる傾向ですので最小値、図面からざっくり計算した場合は大き目になると思いますので最大値と仮定すると面積の目安になるかと思います。
具体的な計算方法は色々なサイトで紹介されているのでここでは割愛します。面倒ですが面積計算以外にも色々な情報がありますので、まずは情報収集に努めてください。
次に壁、屋根の素材は何かを知る必要があります。私の自宅は壁はサイディングボード、屋根はコロニアル(カラーベスト)と言われるものです。現在の木造住宅ではごく一般的な組み合わせだと思います。
我が家の場合、サイディングボード、コロニアル(カラーベスト)どちらも「窯業系」と呼ばれる材料です。(金属系もあります。)窯業系はセメントが主成分で、表面に着色し防水効果を得ていますが劣化するのでメンテナンスが必要となるわけです。同じ理由で屋根材であるコロニアル(カラーベスト)もメンテナンスが必要な材料となります。
サイディングボードは上画像のようにパネル状の板材を貼り合わせて仕上げる壁です。壁の表面をよく観察し、割れや浮きがないか確認します。特にサイディングボードの場合はシーリングと呼ばれる継ぎ目があり、新築から10年程度経過していると赤線で囲んだ部分のようにひび割れていることが多いです。基本的にシーリングは塗装時に打ち替えが必要で、塗装代とは別に費用が発生します。
サイディングボードのようにシーリングはありませんがクラック(ひび割れ)が発生しやすい壁です。クラックがあると塗装前に補修が必要になり、当然ですが塗装代とは別に補修費用が発生します。
この他にタイル貼りなどの壁もありますが、基本的に塗装が必要な壁は上記2種だと思います。
良い塗装業者を選ぶために-2.塗料の種類を知る
難関である塗料の種類です。外壁塗装に使われる塗料は下記のように多くの種類があります。
現在は屋根、壁に使われることはほとんどない塗料です。付帯部分(雨どいや破風など)に使われることはあります。
耐久年数:アクリル塗料/5~7年、ウレタン塗料/8~10年
現在主流の塗料です。ただし同じシリコン塗料でもグレードがピンからキリまであるので注意が必要です。
耐久年数:10~15年
シリコン塗料よりもさらに耐久性の高い塗料となります。私が工事を依頼した塗装屋さんに聞いた話では、塗装に高い技術が要求される塗料だそうです。
耐久年数:15~20年
サイディングボードに使える塗料としては最も高い耐久性があると言われている塗料です。塗料にガラスなどの無機成分が配合されているので紫外線に非常に強く耐久性も高い塗料となりますが、その分、単価も高くなります。
耐久年数:18~20年
外壁塗装の中では一番耐久性がある塗料と言われていますが、サイディングボードの壁にはこの塗料は使えないそうです。理由はサイディングボードには多少なりとも「動き」があり、動くと塗膜が割れてしまうからということでした。
セラミック塗料も種類が多々りますので「セラミック」と名がつく塗料の全てがサイディングボードに使えないという訳でははないようです。例として「日本ペイント/ファイン4Fセラミック」はフッ素系塗料となります。しかし、サイディングボードの家にいきなり高価なセラミック塗料を勧めて来る業者の場合は注意したほうがよいかと思います。
アクリル系塗料が一番耐久性が無い、ということになってしまいますが、アクリル系塗料でも「ラジカ制御系塗料」と呼ばれる物は12~15年の期待耐久年数を持つ製品もあります。
また、耐久年数はあくまでも目安です。正直、塗装が20年も持つとは思えませんので耐久年数の8割程度と考えたほうが無難かと思います。
塗料にも相場があります。しかし、同じメーカーの同じ塗料であっても塗装業者によって価格は違います。会社によって得意な塗料があるからです。その塗装業者がメインで使う塗料が一番大量仕入れ(実績)があるので安くなるという具合です。
塗料には定価があります。「設計単価」と呼ばれるものです。各塗料メーカーで開示されている場合がありますので確認してみましょう。それでは、外壁塗装によく使われている「日本ペイント/パーフェクトトップ」の定価を確認してみましょう。
仕上げの種類 | 材工価格 |
(既存の模様を活かす塗り替え・窯業系サイディングボード等) | (3工程・下塗りがパーフェクトサーフの場合) 3000円/平方メートル |
(既存の模様を活かす塗り替え・コンクリート・モルタル等) | (3工程・下塗りがパーフェクトフィラーの場合) 2930円/平方メートル |
なみがた(塗り替え・コンクリート・モルタル等) | (3工程・下塗りがパーフェクトフィラーの場合) 3400円/平方メートル |
(塗り替え・鉄部等) | (3工程・下塗りがパーフェクトプライマーの場合) 2930円/平方メートル |
※日本ペイントHPより抜粋
上表のように3工程(下塗り、中塗り、上塗りの三回塗り)で3,000円/平米とあります。あくまでも定価ですが、この塗料の場合三回塗りで3,000円を超えることは無いということになります。
これは大事なポイントですので覚えておいてください。
良い塗装業者を選ぶために-3.足場代の相場を知る
最後に、外壁塗装の代金で高額の部類となる足場代の相場を知りましょう。
この足場代も塗装と同じく平米単価となります。注意点が一つあり、足場面積は外壁面積から計算されるのですが、足場は家の外側に設置されますので外壁面積よりかなり大きくなります。我が家の場合は外壁面積の1.3倍程度でした。
足場代の相場ですが、650円〜1000円/平米です。これとは別に養生のメッシュシート代が必要な場合があります。
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塗装業者を探す
さて、いよいよ塗装業者を探す段階となりました。どうやって探すか?飛び込みの訪問業者はもうこりごりです。
残念ながら知り合いに塗装屋さんはいません。紹介もいいかもしれませんが、一つ問題があります。それは「見積もり内容が合わなかった場合に断りにくい」という点です。面倒ですが頑張って自分で探すことにしました。
理想は他数の業者から見積もりを取って比較がいいのですが、そう何件も見積もり依頼をするのも大変です。断る相手も増えるわけですし…。
しかし面倒だからと1社だけでは比較になりません。そこで2社に絞ることにしました。
重視したポイントは以下になります。
1.地元またははできるだけ近い地域の会社であること
あまり遠方の会社ですと後の打ち合わせなどで何かと不便です。また、地元や近い地域の会社であればあまりおかしな施工はできないはず、と考えました。
2.社歴が長く施工実績が多数あること
社歴が長いということは地域に根付いた業者さんである可能性が高いと考えました。また、施工実績が多いということはそれだけ経験も豊富ということになります。
現在はグーグルマップのストリートビューなどでどんな会社か見ることもできますので確認してみましょう。余談ですが、我が家に来た訪問業者の住所をストリートビューで見てみると、「ホントにここが塗装屋さんの会社なのか?」というような場所でした…。
3.自社職人での施工であること
残念ながら受注を請け負うだけで施工は他社へ丸投げ、という会社も存在するようです。その分中間マージンが発生しますので価格が割高となる、または施工品質が落ちる可能性が高くなります。
外壁塗装-見積もり依頼の流れ
自分の条件に見合う会社をWEBで2社に絞りました。見積もり依頼もWEBサイトからフォームに入力するだけと簡単です。
後程2社の担当者から電話があり、打ち合わせの日程を決めます。どちらの方にも「家の図面はありますか?」と聞かれました。図面があると正確な見積もりができますし、実測よりも楽だそうです。幸い我が家には図面がありましたので用意しておきました。
打ち合わせの当日、家のチェックから入ります(約30分程度)。次にどのような内容の工事をするかの話になります。予算やどの程度の耐久性(耐久年数)を希望するか?などを聞かれました。A社、B社ともに何パターンか予算別に提案してくれるそうで、見積もりには約1週間〜10日かかるとのことでした。
またこの時に申し訳ないですが相見積もりであることを伝えておきました。後で言うのは商道徳的によろしくありません。どちらの会社も「普通の話ですので気にしないでください。」という感じでした。
この後見積もりの説明にもう1回、契約という流れとなります。
まとめると1社につき見積もり依頼、見積もり確認と二回面談が必要ということになります。見積もり依頼する会社が増えるほど自分の時間を割く必要がありますので、この点を考慮して依頼する会社数を選定しいただければと思います。
見積もりが出てもその場で即決しない!
さて、見積もりが出てもその場で即決はしないようにしましょう。心情的には早く決めてしまいたくなりますが、おそらく1社で3パターンの見積もりは出てくると思いますのでじっくり検討する必要があります。前もって相見積もりであることを伝えておば検討に時間をくださいと言いやすくなります。ただし、見積もりには有効期限がありますので期限内に依頼するか断るか決めなければなりません。
その場で即決を促すような業者は要注意です。良い会社であれば即決を促すことなどありません。
1.外壁面積を確認する
最初に確認するポイントは外壁面積です。外壁塗装の価格は平米単価ですので金額を左右する一番の係数になります。自分で計算した値より大きくなっていると不安になりますが、この時に相見積もりが役に立ちます。各社を比べ、大差なければ合っていると考えてよいと思います。会社間で大きな差があればなぜこの差が生まれるのか聞いてみましょう。我が家の場合は自分で計算した値より大きい面積でしたが2社の面積はほぼ一致していました。
2.塗装単価を確認する
見積もりには具体的にどの塗料をどの場所に使用するかが書かれているはずです。塗料を検索して設計単価と相場を比較してみましょう。設計単価の80%程度であれば適正かと思います。
内容 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
高圧洗浄 | 160 | ㎡ | 120 | 19,200 |
外壁塗装(塗料名/下塗り、上塗り 3回) | 160 | ㎡ | 2,300 | 368,000 |
小計 | \387,200 |
外壁塗装工事の見積もり例としては上表のようになります。具体的な塗料名が記載されていることが重要です。「シリコン塗料」などしか記載のない場合はよい業者とは言えないと思います。
内容 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
高圧洗浄 | 160 | ㎡ | 120 | 19,200 |
外壁塗装(材料名/下塗) | 160 | ㎡ | 500 | 80,000 |
外壁塗装(塗料名/中塗り) | 160 | ㎡ | 2200 | 352,000 |
外壁塗装(塗料名/上塗り) | 160 | ㎡ | 2200 | 352,000 |
小計 | \784,000 |
これは実際に私が経験した見積もりの例です。本来は3回塗り/平米単価のところを3つに分けて単価を設定しています。通常の倍+下塗り価格となるわけです。要するに水増しということですね。そりゃ高くなるはずだわ…。このような見積もりを出してくる業者は論外ですので外しましょう。
3.シーリングの材料を確認する
シーリング工事が必要な場合、シール材料が記載されているかを確認します。材料名が明確でない場合はどの材料を使うのか確認しておきましょう。
また、基本的に壁の目地部分は打ち替えですが、窓枠やサッシ周りなどは増し打ちの業者もあります。打ち替えと増し打ちでは単価が違いますのでそこも要確認です。
4.付帯部塗装のが明確に記載されているか?
外壁、屋根以外にも塗装が必要な箇所があります。雨どい、窓枠、シャッターボックス、雨戸、軒裏などで、付帯部塗装と呼ばれます。この付帯部塗装も大事な塗装となりますので、使う材料や面積などを確認しておきましょう。
最後に
塗装業者選びは本当に難しいです。車であればディーラーで買おうが代理店で買おうが(対応や価格にに差はあるとしても)車自体は全く同じ品質なのでよいのですが、塗装はそうはいきません。使う塗料自体は同じでも施工が悪ければ耐久性は落ちてしまうからです。
私も2社の見積もりが出てから非常に悩みました。どちらの担当者もいい人で、内容もよかったからです。価格はA社より高かったですが、私はB社を選びました。(具体的な価格は書けないので申し訳ないですが…。)決め手はB社のほうが塗装への「こだわり」を感じたからです。ほとんど人で選んでしまったと言ってもいいかも知れません。
さてこの選択が正しかったかどうかがわかるのは約10年後です。そして契約が済んで1週間ほど経った頃、また訪問業者がやって来ました。
【訪問業者】「すいません、外壁塗装のキャンペーンで廻らせてもらってまして、今なら塗料代だけで塗らせてもらいます!」
皆様、本当に気を付けてください…。